泣き寝入りしない!養育費が支払われない場合の対処法
養育費は、長期間に渡り必要となり、長期間支払い続けなければならないお金です。
このため、長期に渡る支払期間の途中で支払う側の経済的な事情の変化により、養育費が支払われなかったり、支払いが滞ったりする可能性が無いとは言い切れません。
では、養育費の支払いに関するトラブルを事前に避けたり、養育費が支払われなかった場合には、どのような手段が考えられるのでしょう。
今回は、養育費が支払われない場合の対処法について、考えてみたいと思います。
養育費をきちんと受け取るためには事前準備が重要
長期間に渡る養育費の支払いをきちんと受け取るためには、離婚する前に父親と母親の間で条件について話し合い具体的に取り決めておくことが重要です。
なぜならば、離婚する前に養育費の条件についてきちんと準備をしておけば、後々面倒な手続きをする必要がないからです。
養育費の具体的な条件については、慰謝料や財産分与など離婚に関するその他の条件と同様に、離婚前に話し合いによって決めることが基本です。
しかし、話し合いによって養育費の条件を決めることが出来ない場合や話し合いに相手が応じようとしない場合には、家庭裁判所に調停を申し出、調停委員立ち合いのもと双方が納得できる合意点を探っていきます。
そして、調停を行っても合意が得られない場合については、法律と同じ効力を持つ審判により、最終的な決定が行われます。
話し合いや調停により合意した養育費の条件については、必ず公正証書を作成しておくことをおすすめします。
なぜならば、公正証書には強制力があるため、万が一養育費の支払いの約束が守られなかった場合、相手の財産を差し押さえることが可能だからです。
特に、話し合いによる協議離婚の場合には、養育費の支払い条件について口約束だけで済ませてしまいがちですが、条件については法的強制力のある公正証書で記録を残し、万が一養育費が支払われなかった場合にも、速やかに対処できるように準備をしておくことが重要でしょう。
なお、調停が成立した際に作成される調停調書にも、公正証書と同様に法的強制力があり、相手の財産を差し押さえることが可能です。
養育費を減額する理由とは
とはいえ、養育費の支払いが滞ってしまう理由には、必ずしも悪意があるものばかりとは限りません。
たとえば、会社の倒産により転職を余儀なくされたり、病気で長期間働くことが出来なかったたりなど、やむを得ない事情により収入がへ減ったため、養育費の支払いに大きな影響を及ぼすことも考えられます。
このため、養育費の支払いが滞った場合には、まず話し合いを行い相手の事情について理解を示すことが重要なのです。
もし、養育費の支払いが滞っている相手が今後も養育費を負担する意思がある場合には、いきなり強制的な手段に出るのではなく、相手の経済的事情に配慮し条件を見直したり積極的にアプローチすることも必要です。
たとえば、相手の収入が減った場合には、収入の減少額に応じて養育費の減額を検討したり、支払いがルーズになっている場合には積極的に働きかけを行うことにより、状況が改善され養育費をきちんと受け取る可能性が高まるでしょう。
養育費が未払いになった時の請求方法
養育費が未払いになった時の請求方法には、公正証書がある場合と公正証書がない場合とで大きく異なります。
離婚時に養育費の支払い条件について公正証書を作成している場合には、裁判所による強制執行によりいきなり相手の財産を差し押さえすることも可能ですが、公正証書が無く養育費の請求を行いたい場合には、まず家庭裁判所に調停の申し立てを行う必要があります。
家庭裁判所に調停の申し立てを行うと、調停委員を通じて父親と母親が養育費の条件についてやり取りを行い、条件について取り決めを行います。
そして、通常であれば調停によって合意した条件に基づき養育費の支払いが開始されるわけですが、合意したにもかかわらず養育費の未払いが続く場合には、養育費の支払い義務のある相手に対し履行勧告の申し立てを行うことができます。
履行勧告とは、家庭裁判所が養育費の支払い状況を調査し、養育費を支払う義務のある相手に支払いを勧告したり指導したりする制度です。
履行勧告により、家庭裁判所による勧告や指導を行うことができますが、残念ながら法的拘束力がともなわないため履行勧告に相手が従わなくても罰則などはありません。
ただし、履行勧告は裁判所という公的機関による勧告のため、養育費の支払い義務のある相手に対しある程度のプレッシャーを与える効果は期待できるでしょう。
履行勧告に従わない場合には、履行命令と呼ばれるより効力の強い措置に切り替えることもできます。
履行命令とは、養育費を支払う義務のある相手に対し期限内に支払いを行うよう命令する制度です。
履行命令は、履行勧告と同じく法的拘束力はともないませんが、命令に従わない場合最高10万円の制裁金を養育費を支払う義務のある相手に科すことができるため、プレッシャーだけでなく経済的なダメージを与えることができるのが大きな違いです。
なお、離婚の際に調停により養育費の取り決めを行っていた場合には、再び調停の申し立てを行う必要はありません。
調停で取り決めを行っていた場合には、家庭裁判所に履行勧告や履行命令の申し立てを行うだけで、再び調停を行うことなく、養育費を支払う義務のある相手に対し履行勧告や履行命令を出してもらえます。
強制的に養育費を取立てる方法
家庭裁判所による履行勧告や履行命令でも養育費の未払いが続く場合には、地方裁判所による強制執行を養育費を取り立てることを検討しましょう。
強制執行による差し押さえとは、養育費を支払う義務のある相手の給与や退職金、預貯金、不動産、家財道具などの財産を差し押さえ、養育費の支払いとして割り当てる制度です。
具体的には、給与は2分の1まで差し押さえることが可能なほか、過去の未払い分だけでなく将来の養育費についても差し押さえを行うことが可能です。
特に、養育費を支払う義務のある相手の場合には給与差し押さえによる効果は大きく、自営業者の場合には売掛金なども差し押さえ財産の対象となります。
また、強制執行による差し押さえを行うためには、債務名義と呼ばれる書類が必要となります。
債務名義として認められる書類としては、公正証書、調停調書、審判書、判決書などが挙げられます。
なお、強制執行により養育費を取り立てる手続きはすべて自分で行うこともできますが、専門的知識やいろいろな手続きが必要になるケースが多いため、弁護士など専門家によるサポートを受けながら対処するのが現実的で確実な方法といえるでしょう。
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